◆垢抜けした尼崎 

 尼崎のイメージといえば「工場地帯」がまず脳裏に浮かんでくる。大手・中小の工場が大阪湾岸沿いに密集し、北へ阪神電鉄、JR線、更には名神高速道路付近に至るまで広がっている。日本が誇る有数の工業地域である。 高校時代の親友が尼崎に住んでおり、よく訪ねたことがある。「JR尼崎駅」と名が付いた所が市の中心地になる場合が多いのだが、尼崎一番の繁華街は阪神電鉄「尼崎駅」周辺であった。そこは昼夜共に賑やかで大変な活気ある街となっている。

 庶民の温かさを感じる雰囲気は、私の大好きな町のひとつでもある。しかし親友はJR側に住んでおり、夜ともなれば辺り一帯は薄暗く、少々怖い感じさえする対照的な地域であった。その理由のひとつに、駅周辺には「キリンビール」、「ヤンマーディーゼル」、「神崎製紙」等々、日本を代表する大手企業の工場が立ち並び、広大な土地を占めていた。そのために通勤以外は余り人気もなく、各駅停車しか止まらない寂れた感じの駅に見えた。

 この「JR尼崎駅」の生まれ変わった姿を目の当たりにして、私は驚きを隠せなかった。この駅には東海道線の新快速をはじめ殆どの電車が止まるようになっていた。それは新たに東西線が開通したことによるもので、福知山線に宝塚線の沿線での急激な人口増。大阪への通勤が大幅に拡大した結果によるものである。そしてエレベーターにエスカレーターもあり、トイレも新しく車椅子も可。みどりの窓口にicocaにJスルーの対応も。駅前の整備にバスターミナル。ショッピングセンターに高層住宅と完璧だ。

  近松門左衛門ゆかりの地「尼崎」は、歴史と共にすっかり垢抜けした駅前に変身。空気まで新鮮な風が吹いているように感じた。

撮影2004年 冬