見事な桜花爛漫の季節であった。自宅から歩いて30分余りの所に、桜の名所で有名な「須磨寺大池」があった。その日は家族で夜桜を見に行った。ピンク色の提灯が華やかに光を放ち、桜の花を照らしている。沢山の人で賑わっていた。父は私を誘ってボートに乗せてくれた。生まれて初めて握ったオール。少々緊張しながらも父の教え通りに必死で漕いだ。結構楽しかった。横で漕いでいた叔父さんが「ボク、いい身体しているね。何キロあるの?」と話しかけてきた。「ハイ、45キロです」と答えると、更に「何年生?」「ハイ、4年です」。この対話を父はじっと聞いていた。子供が褒められていることに、満足そうな笑顔を浮かべていた。47年前の10歳の時の思い出である。 その後、中学に入って学年別マラソン大会が毎年行われた。その時のスタートとゴール地点がこの池畔であった。団塊の世代の私が中学に入って最も驚いたことは、一学年で22クラスもあり生徒数は何と1200人。更に私が三年生の時には二年生が19クラス、一年生が18クラス。合計すれば59クラスにもなり、全校生徒3200人。マンモス学校であった。ちなみにマラソンのような長距離が苦手な私は700番代であったと記憶している。
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