ゲートを通ればそこはフランスであった。兵庫県庁舎、兵庫県警察本部、相楽園等、兵庫県の心臓部ともいえる地域の一角に「兵庫県公館」はあった。ここはフランス・ルネサンス様式の伝統を踏まえた代表的な名建築である。子供の時にこの建物の前はよく通った。しかし立派な建物であることは見てのとおりであるが、何をするところであるかが分からない。これまで中に入る用件もなければ、関わりもなく、ごく最近まで本当に知らなかったのだ。 これは1902(明治35)年「兵庫県庁舎」の建設にあたって、当時文部省の建築家として大活躍した山口半六が設計し竣工となったものである。しかし山口半六は完成を見ずしてこの世を去っている。代わって工事監督の秋吉金徳が完成させている。残念ながら第二次世界大戦で戦災に遭い、一部を残して大半は焼失してしまった。しかし関係者の努力により、外観は現状保存して煉瓦造をコンクリートで補強するなど、建築当時に復元することに成功。特に南側中央建物の屋根を曲面マンサード状に復元され見事に甦っている。更に庭園も都会の中にあって、楠木をはじめ立派な木が育ち小さな森を造っている。昼休みともなれば木陰で弁当を広げ、近くの人達の心休まる憩いの場ともなっている。 ところで現在この建物の使用目的は、迎賓館としての役割と、もう一つは県政資料館として各種の展示をしている。そういえば知事が出席しての来賓対応、表彰式等をテレビ、新聞で見たことがある。私にとってはこれまでご縁がなかったから、あまり印象に残らなかったと思っている。
|