空気が冷たく感じたのは、実に久しぶりであった。六甲山脈の再度山奥にある「森林植物園」に着いた時のことである。車を降りて外気に触れた時に感じた第一印象がそれであった。下界とは3〜4度も温度差があるように聞いている。紅葉、黄葉の見事な季節であった。園内には様々な秋の草花が、冬を迎える前に精一杯美しさを誇っていた。
子供の頃は特に男の子は花を見ても、さほど感動をすることはなかった。たとえ綺麗な花だと思っても、自分の部屋に飾ろうとまでする感性はない。したがって小学生の遠足で「神戸市立森林植物園」に行ったが、面白くも何もなかった。ワンパク盛りの子供にはむしろ近くの公園で、体を動かしているほうが楽しかった。したがってそれ以来、一度も来ることはなかった。しかしこの歳になるまでに、何度も花や木に接する機会に恵まれた。ワンパク小僧もやがて大人になると、花の名前、美しさ、価値、季節まで興味を持つようになった。
結婚して7回引越しをしたが、庭の付いている家には恵まれなかった。庭さえあればもう少し意識が変わっていたに違いない。しかし今の家には、玄関の花を絶やすことはない。台所、テーブルの上にもいつも綺麗な花が飾られている。更には家の周りにも鉢植えであるが花盛りである。わが人生、変われば変わるものである。これもクラッシク音楽と同じで、何も分からずともただ聴いているだけで、耳が慣れてきて、その良さが少しずつ分かってくる。花もじっと見ていると目が慣れてくる。それに様々な匂いを感じ、美しさの感性が不思議にも養われていく。全ての花に感謝を込めて!
撮影2004年 秋