「なーにやってんだー! だーめじゃないの!」茨城県出身の柔道部先輩の方言のきつい言葉であった。関西出身の私にとっては、素朴で田舎なまりの言葉は新鮮にさえ聞こえた。その先輩は中肉中背で決して大きくはないが、左組でそれも徹底した変形柔道。相手に全く柔道を取らさないで、自分のペースで柔道をするタイプ。とてつもなく強かった。どんな人が来ても自分の型にはめてしまい負けることはなかった。大学卒業後に警視庁に入り、そして柔道日本一に輝いている。冒頭の言葉は尊敬するその先輩の口癖のような言葉であり、私の耳に今もって録音テープの如く聞こえてくる。更にもう一年先輩には東京オリンピック柔道中量級金メダリストの岡野功氏がいる。彼も同じ茨城県出身であった。
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