◆水戸は教育の町

 「なーにやってんだー! だーめじゃないの!」茨城県出身の柔道部先輩の方言のきつい言葉であった。関西出身の私にとっては、素朴で田舎なまりの言葉は新鮮にさえ聞こえた。その先輩は中肉中背で決して大きくはないが、左組でそれも徹底した変形柔道。相手に全く柔道を取らさないで、自分のペースで柔道をするタイプ。とてつもなく強かった。どんな人が来ても自分の型にはめてしまい負けることはなかった。大学卒業後に警視庁に入り、そして柔道日本一に輝いている。冒頭の言葉は尊敬するその先輩の口癖のような言葉であり、私の耳に今もって録音テープの如く聞こえてくる。更にもう一年先輩には東京オリンピック柔道中量級金メダリストの岡野功氏がいる。彼も同じ茨城県出身であった。 

 水戸市のイメージといえば、まず大相撲の「水戸泉」を思い出す。大柄でいて人懐っこく親しみのある力士で、手のひら一杯に塩を撒く姿は人気者でもあった。幕内優勝の経験も持っている。更に高校野球では少し距離的に離れているが土浦市に「常総学院」がある。全国優勝した時の木内監督の言葉に「私は日本一の選手を持っていたために優勝が出来て本当に幸せ者です」と。自分自身を宣揚するのでなく、あくまでも選手達を最高に褒め称える姿に、全国の人に感動を与えたことを今でも覚えている。

 水戸駅近くを歩いていると、ここは何だろうと近づいて看板を見て驚いた。「水戸市立三の丸小学校」と書かれてあった。しかし学校の外壁も校舎もまるでお城のようであった。ユニークな建物ではあるがこれも教育の一環であると私は賛同した。校庭では子供達が運動会の練習に汗を流していた。また県立歴史館の敷地には一際目を引く立派な建物があった。全国でも数少ない欧米化された「旧水海道小学校」の見事な校舎である。これらの学び舎から多くの有能な人材が、日本の社会に育って行ったであろう。日本の将来を考えると、今こそ教育の重要性が問われている時代はないように思う。

撮影2004年 秋