台風10号が四国・中国を直撃したあくる日に、家族揃って毎年夏休み恒例の一泊旅行に出かけた。しかし神戸の自宅から車に乗って一泊で行ける所は、距離からして限られてくる。今年は私の友人の紹介で徳島県・鳴門にあるホテルを予約した。一部屋で5人の「ざこ寝」であるがが素晴らしく豪華なホテルである。明石海峡大橋を通り淡路島に入って一般道を走り、更に大鳴門橋を渡ったところが鳴門市である。高速道路を使って直通で車を飛ばせば、僅か1時間少々で到着してしまう距離である。
鳴門市内に着いたのは昼を少々回っていった。前日の台風はまだ残っており、昼間でも薄暗い。昼食を何にするかは旅行の楽しみの1つでもある。みんなの意見はバラバラで、市内の中心部をぐるぐる回って見たが適当な店は見付からない。やっと入ったのが「うなぎ屋」であった。駐車場も広く、店内も和風のインテリアでなかなか感じが良かった。美味しい「うなぎ」を食べながら、ふと昔の頃を思い出した。私は1975(昭和50)年9月に結婚をした。私の後輩がその年の暮れに結婚をするとのことで、夫婦で招待を受け出席したのが、鳴門のこのすぐ近くの料亭であった。5時間を超える披露宴は、日帰りする我々には少々長かった。しかし和やかな雰囲気と出席者同士の温かい人間の交流で、最後まで付き合ってしまった。新郎の実家はこの近くで「うなぎ」の養殖をしており、新郎より「毎日大量のうなぎを見ていると、とても食べたいという気にはなれない」と。気持は分かるが、うなぎ大好き人間の私にとっては実にうらやましい話であった。家族みんなが食べ終わり、満足な顔をしている姿にふと我に帰った。店の外に出て見上げて見ると、鯉のぼりかと思いきや、それは生まれて初めて見る「うなぎのぼり」であったのだ。 初めてうなぎを食べたのは東京であった。東京では「うなぎ」はとてもメジャーな食べ物で、小さな商店街であれば必ず一軒はある。関西では「うなぎ屋」を見付けるのは難しい。それほど少ないのである。しかし神戸の目立たないところに美味しい店がある。そこは私が自慢する大好きな行きつけの店なのだ。友が友を呼び、今では並ばなくては食べられない処となっている。 撮影2004年 夏
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