◆ 尾張徳川家が残した「宝」

 テレビ・映画でお馴染みの「水戸黄門」。時代劇でこれほど長きに渡って愛されているドラマは他にない。一番のクライマックスは「葵の紋」の入った印籠を見せるシーンである。それを見せた瞬間、全ての人が頭をひれ伏す姿には、いかにすごい威力であるかが分かる。痛快なるストーリーは毎回よく似たものであるが、何回見ても飽きない魅力を持っている。

 真夏の名古屋は暑かった。そんな中で「徳川園」を訪ねる機会に恵まれた。園内に入って最初に驚いたのは「徳川美術館」の白壁に掛かっている金色に輝く「葵の紋」。一瞬ドッキとさせられた。ここは徳川家康より始まった江戸幕府・徳川家ゆかりの場所なのだ。

 この美術館は徳川義親の寄贈に基づき、御三家筆頭62万石の大大名、尾張徳川家に伝えられた数々の重宝、いわゆる「大名道具」をそっくりそのまま収め、1935(昭和10)年に開館している。徳川家康の遺品をはじめ、家康の九男・義直を初代として代々の遺愛品一万数千件。更には世界的にも有名な「国宝・源氏物語絵巻」ほか、国宝9件、重要文化財53件、重要美術品45件。これだけの"宝"が残され保存されていることに驚きを感じる。この美術館の最大の特長は、尾張徳川家に伝わる大名道具が散逸することなくまとまって伝えられており、収蔵品の伝来が明確であることである。更に「蓬左文庫」では、河内本源氏物語や読日本紀など重要文化財7件・154点を含む和漢の古典類約80000冊の蔵書がある。そしてこれらを囲むかのように素晴らしい日本庭園が広がり、一層の豪華さと見事な調和を感じさせてくれる。遥か昔からの宝物を現代に伝え残された先人に感謝である。

 江戸時代が終わって136年の歳月が経った。近代日本に生まれ変わり、政治、経済、文化等、全ての分野において世界のトップレベルまで発展をしてきた。その歴史は目を見張るものがあり、日本の誇りでもある。江戸時代が今も続いていると想像すれば私はどんな人? 

 撮影2004年 夏