◆ 明石海峡「たこフェリー」

 本州から淡路島に渡るには、一昔前までは船でしか方法は無かった。神戸・須磨港から淡路島・大磯港の航路をはじめ、一番近い距離を走るのが明石港から岩屋港(約20分)であった。けっこう便利であったが、1998(平成10)年4月「明石海峡大橋」の開通により本州と淡路島は陸続きとなってしまった。これまで重要な交通手段であった「フェリーボート」も廃業を余儀なくされた。明石海峡大橋(3911m)を通り淡路島の中央を走る高速道路を車で走ると、そのまま大鳴門橋(1629m)を通過して四国に入れる。人間の力・技術の素晴らしさは、困難な自然条件をも克服出来る能力を持っている。

 嬉しいことに明石港──岩屋港のフェリー航路が生き残っていたのだ。写真は「あさしお丸」であるが、通称「たこフェリー」として皆から親しまれている。橋を使わず舟を利用するには、それなりの理由があるはずだ。まず料金が安い。それに360度のパノラマのロケーションを楽しめる。特に角度を変えて世界最長の明石海峡大橋を、海上からの目線で見れる感動は素晴らしいものがある。更に海峡を行き交う大小の船舶の迫力。川の流れのように見える海峡の海。西の水平線へ沈みゆく大自然が織り成す見事な夕日は、とても言葉で表現できるものではない。

 この辺りは昔から「たこ」の産地として有名である。漁獲量も多く大衆料理として、広く一般家庭の食卓で愛ている。海峡の速い流れに生息しているだけに、身がよくしまっている。明石の街を歩くとやたら「たこ焼き屋」が多い。店によっては並んで待っている。ここはたこ焼きのルーツの場所なのだ。「明石焼」、「玉子焼き」とも呼ばれ、卵とだし汁を多く使っているため柔らかく、そこに獲れたての「明石たこ」を使えばもう最高の味である。私は小麦粉が硬めで出来た「たこ焼き」よりも「明石焼」のほうが好きだ。一皿に15個のたこ焼きがきれいに並べられたものを2皿注文する。出汁の入ったお椀に一度に3個入れ、箸でたこ焼きを少し付き刺し,出汁を沁みさせる。これが私流の食べ方なのだ。

撮影2004年 夏