小学校の高学年の時に、奈良へ遠足に行ったことを今も鮮明に覚えている。ここには社会科や美術の教科書で見たことのある建物が沢山あったので、非常に親しみを感じた。特に奈良の大仏さんの大きさにはビックリ。東大寺の建物の中にある一本の柱に、人間がギリギリで通り抜ける穴が開いていた。通り抜ければ御利益でもあるのか、みんな挑戦をしていた。当時でも大人ほどの体格をしていた私であったが、何とか通り抜けた思い出がある。今ではとても通れそうもないが、もう一度その穴を見て見たい気もしている。 奈良公園に行けば、ここのシンボルである「鹿」に是非会いたいものだ。私が行った時に公園内を見渡すと、暑くって木の下に固まって休んでいた。恐る恐る近づいて行ったが別に逃げるわけでもなく、人間をまるで友達のように思っているのであろうか。公園内には1000頭も生息しているというから驚きである。「鹿せんべい」をちらつかせるとゆっくりと近づいてきた。しかし大きな鹿5〜6頭に囲まれて餌をねだられるとパニックになってしまった。私は動物が苦手である。いつ野生に戻るか分からない不安が絶えずあるからだ。でも少し離れた所から見ていると、とても可愛く思えてくる。取り分け小鹿のバンビーは優しそうな目をしており、斑点の模様が実に美しい。 ここの鹿は完全な野生動物で、牧場などで見る牛や羊のように飼育されているものではない。したがって誰かの所有物でもなければ、何処かに鹿舎があるわけでもない。鹿にとって奈良公園付近の草原は、生息する環境に適しており、国の天然記念物に指定して保護されてもいる。鹿にとって地元の人は勿論、観光客等の人間に対して敵対することなく、また頼ることもなく共生する世界的にも珍しい状態を、実に1000年以上も続けているのだ。これまでと同じように人間と鹿の絶妙の関係を、いつまでもいつまでも後世に伝え残したいものだ。 2004年 夏
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