◆闘竜灘に見る男の強さ

 ごつごつした岩がむき出しになり、その間を大量の水が音を立てて怒涛の如く流れ抜けていく。力強い「男」を感ずる川である。ここは加古川の中流に位置する「闘竜灘」。西脇市を少し下った所にある有名な観光スポット。幕末の詩人「染川星巖」により、巨龍の躍動に似たところから名づけられた。静かに穏やかな流れは、突然の奇岩の固まりが川床いっぱいに広がり、ここに来て急に流れが変化する。落差3メートルの流れは岩に激しくぶち当たり、水しぶきを飛び散らし豪快で迫力を感じざるを得ない。そしてここは春の季節ともなると飛び鮎が見れることから、観光客を大いに楽しませてくれる。毎年5月1日には全国で一番早く鮎漁が解禁となることでも有名。

 1980年前後、大相撲に「闘竜」という中堅力士がいた。彼は兵庫県加古川の出身として場内アナウンスで紹介されていた。大きな体は力士の中にあっても人気は目立つ存在であった。しかしインタビューに答える様子から伝わってくる人柄は、気は優しくて力持ちに見えた。決して派手ではないが好感の持てる人物に映った。絶えず前頭の上位を維持しており、大きな体を生かして激しく相手を突き出す相撲に魅力を感じ、私は好きであった。相撲取りの「しこ名」には出身地の地名から取る場合がある。まさに「闘竜」とは地名からして戦う男には最高の名前であるように思えた。

 これまで何回かここを訪ねたことがある。川の流れは来るたびに違うように見える。荒々しく、そして激しく岩にぶつかり砕け散る水しぶき。人生も失敗を恐れず、挑戦し続ける若き時代が大事である。気持・意欲そして力強い強靭な精神だけは決して老いてはならない。それが闘竜灘である。

撮影2004年 夏