関西で男の最高の贅沢は、仕事は大阪、住むのは神戸・芦屋。そのように聞いたことがある。私も一時期その通りの生活をしたことがある。大阪の鶴橋近くで仕事をしており、住まいは神戸の長田。これでは男の贅沢として少々意味が違ってくる。ともにホルモン焼のニオイがしてくるようだ。
芦屋市は阪神間の神戸市と西宮市の間に位置しており、人口は86,000人余りの住宅都市である。芦屋と聞いただけで、お金持ちが住む所として全国的に知られている。六甲山地の山裾から見る景観は昼も夜も最高。大阪湾と阪神間の大都市を見下ろせる、それだけでも心を癒してくれる。そこに目を付けたのが昭和の初期あたりから大阪・神戸で成功した豪商たちであった。彼らは競ってこのあたりに別邸を求めた。やがて素晴らしい高級住宅の地域へと発展。その代表が「六麓荘」である。 この六麓荘では「無職」の人の方が地域的ステータスが高く、大手企業といえども社長では近所の人から「まあー、大変ですね。まだお仕事をされているのですか」となる。つまりあくせく仕事をしなければいけない境涯では、この地域ではまだまだ認められないとのこと。嘘のような話である。 この地域の一軒の屋敷を訪ねたことがある。道路の角から角までが自宅の敷地で優に100mはあろうか。外壁は大きな石を積み重ね、中に入ればモダンな大豪邸が建てられていた。各部屋は和室と洋室が見事にミックスされ、和室から見える庭は日本庭園。洋室から見える庭はヨーロッパ調のバラ園。半円形の建物には二階までの吹き抜けに、ステンドグラスをはめ込んだ洋風応接間。会議室、豪華なパーティールーム、掛けられている絵画に置物は高級感が漂っている。それに宿泊設備の整ったお客様用個室。大きな蔵には貴重な品物も。庭に出て奥の方へ歩いて行くと小川が流れ池があり、井戸も掘ってある。樹木、草花も綺麗に手入れされている。同じ人間であってもここまで生活が違う。ここに住んでいる人はどんな人?私には宇宙人でしか思えない別世界の人であった。 撮影2004年 夏
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