◆未来都市「六甲アイランド」
 山と海に挟まれた神戸は、平らな土地は極めて少なく坂の多い街である。私は妻と結婚して驚いたことの一つに、彼女は自転車に乗ることが出来なかったのだ。その理由に神戸の山側に住んでいた彼女の自宅付近は、平坦な道がほとんど無く、山あり谷ありで全く自転車が必要なかったのである。したがって自転車を持っている人もいなかった。大阪に転勤になって平野区に住んだ。そこは山も谷も坂すらない所であった。生活するには自転車は無くてはならない必需品。彼女30歳にして遅まきながら近くの公園で練習。それでも何回か擦り傷をして家に帰ってきたことを思い出す。

 神戸の山奥より山を削った土をベルトコンベアーで海まで運び、それを船で神戸港沖に人口島を造ったのが「ポートアイランド」であり、その後に出来た「六甲アイランド」である。削られた山の跡地には見渡す限りの団地が建設され、ベッドタウンに大変身。一挙に「島」と「ベッドタウン」が同時に出来上がり、神戸市の構想は大成功となった。

 1972(昭和47)年に待望の六甲アイランドの埋め立てを着工。約15年で完成している。その後は理想的な街づくりが官民一体で始まり、住宅・商業・港・文化・公園・病院・学校等々。特に神戸らしいファッションプラザを始め、ファッション美術館もオープンしている。ポートアイランドと同じく、「六甲ライナー」が島を一周しており、重要な交通アクセスとなっている。

 1995(平成7)年の阪神大震災ではさすがに新しい建物のためか、大きな被害は無かったように聞く。しかし私の知り合いが六甲アイランドの高層住宅に住んでおり、電気・ガス・水道のライフラインがストップ。47階に住んでいた彼は当然エレベーターは動かず歩いて階段を下り、ポリ容器に一杯入った水を抱えてまた47階まで運び上げる。この一回で2時間もかかり、体力の限界であったそうだ。高層住宅故の悩みであろう。あれから9年が過ぎた。街はすっかり落ち着きを取り戻し、計画された理想の未来都市に相応しく、以前にも増して快適な生活が送られている。

撮影2004年 夏