◆ 太平洋の白鳥「日本丸」

 私の勤めるオフィースのビルからも、通勤の行き帰りからも神戸港が見える。特に夜見るウォーターフロントのイルミネーションは美しい。これまで何度も出くわしたが、山のように見えるイルミネーションにハッと気が付く。そうだ今「日本丸」が「海王丸」が入港しているのだ。帆船は実に美しい。私には芸術作品にさえ思える。帆船を愛するファンは沢山いる。それが証拠に見学会が催されると多くの人が各地から集ってくる。また帆船の美しさに魅せられて模型に夢を託する人もいる。先日、北海道の恵庭市に住む藤本さんのお宅を訪ねた。驚いたことに素晴らしく大きな帆船の模型が、所狭しと何隻も飾られていた。見事としか言い様がない精巧なもので、時間とお金と体力と根気がなければ到底完成はしない。しかしそれだけではこれだけの大作は完成するものではない。

 実はそれ以上に藤本氏の帆船を愛する情熱はすごいものがあるように思えた。まるで執念のようにも伺え取れた。彼はこの帆船と共に大海原を白鳥の如く、縦横無尽に世界中を周る夢を持ち続けているのであろう。これぞ男のロマンなのだ!

 日本丸は神戸で建造。1930年に文部省に引き渡され、以後姉妹船「海王丸」と共に訓練航海に従事。太平洋戦争の戦禍からも守られ、様々な役目を担いつつ1953年、戦後初めて遠洋航海としてハワイに向けて白帆を掲げました。「太平洋の白鳥」あるいは「海の貴婦人」と呼ばれつつも、1983年現役引退を余儀なくされ、練習船としての役目を日本丸U世に譲ることとなる。その間に育てた実習生は何と11,500人。航海した距離は183万キロ(地球45.4周)に及んでいる。今は第2の人生とでも言おうか、横浜のマリタイムミュージアムの海に静かな余生を送っている。その美しい姿は長く保存され、これからも多く人達に夢と希望を与え続けて行くことでありましょう。

 20数年前のことであろうか、この場所で日本丸を前にして「海で働く男の写真展」が開催され、私も参加した。船員の目で撮る写真。船から撮る写真。彼らはカメラのプロではないが、彼等でしか撮れないシャッターチャンスを持っている。この日本丸で訓練を受けた船員達は、男のロマンを胸に海運界の荒海に挑戦しつつ、今も必死で頑張続けていることを私は知っている。

撮影2004年 春