◆「勇気」に心より拍手を

 マレーシアからの留学生「朱光輝(チュウ・コンフィ)」君と共に新幹線に乗って岡山駅に着いた。駅前には「桃太郎」の像が建っており、童話の発祥の地であることがすぐ理解出来た。さあ!勇気を持って出発だ。目的は結婚の承諾と結納を収めさせて頂くことにあった。相手の女性は「藤田安以子」さん。関西外国語大学を卒業後、鍼灸師の勉強をしている頑張屋さん。実家はここ岡山市内にあり、両親二人が住んでおられた。彼女は一人娘の一人っ子であった。

 一方、チュウ君は大阪にある大学を卒業し就職も東京銀行マレーシア支店(クアラルンプール)に決まっていた。つまり彼女と結婚した後に一緒に帰国を希望。しかしそれは明らかにマレーシアに永住することを意味している。私もそのことを承知でご両親に結婚の承諾を貰いに行ったのである。勿論、二人の深い信頼と愛情を確認している。そこには浮ついた外国への憧れも海外旅行のようなものは全くない。真面目な真剣な付き合いであった。

 初めてご両親とお会いした私達二人は、友好的に家族の中に打ち解けていった。しばらく時間が流れていったとき、ご両親から改まって話があった。「娘をあなたに差し上げます。どうか幸せにしてあげて下さい!」私は感動した。勇気ある素晴らしい言葉であり態度でもあった。これまで大事に育ててきた可愛いたった一人しかいない娘を、それも遠く知らない国へ嫁がせるのである。私には4人も娘がいるがとてもそんな勇気ある決断は出来そうにはありません。

 あれから20年以上の歳月が流れた。今 彼らはマレーシアの首都クラルンプールに住んでいる。素晴らしい息子2人と父親ソックリの娘1人の5人家族になっている。3人とも優秀な成績の学生である。違う民族とのミックスは優秀な子供が出来ると聞くがそれは本当である。 チュウさんとの友情は今も続いている。私の家にも家族で何回も泊まりに来ているし、子供たちだけでも何日も滞在もしている。そして私の長女もゴルフの練習を兼ね、更には次女もゴミ処理、ジャングルでの生物調査・研究のためマレーシアを訪ねている。子供たちの世代まで友情の絆は受け継がれている。本当に嬉しいことであります。

 日本とマレーシアの友好の架け橋として勇気ある決断をされた今は亡き藤田さんご両親に感謝申し上げつつ。合掌。

撮影2004年 冬